【M&Aという経営者の資質向上】
二十一世紀の日本は、まさに大不況の中で幕開けを迎え、好転の兆しすらみえないまま今日に至ってます。まさに、多くの企業が出口の見えない大不況にあえぎ、「どの企業が倒産しても不思議ではない」などと、穏やかではない言葉が平然とささやかれる時代になってしまいました。
度重なる銀行の倒産、倒産を回避するための経営統合等々、銀行はもとより、多くの企業が、単体での経営に終止符をうち、合併、提携、そして業界の再編成等、企業連衡にて生き延びる道を求めている現況です。
さて、大手企業の動向はさておき、日本の大多数を占める中小企業経営者は、どのような戦略で、この不況を乗り越えようとしているのでしょうか。
私は、山形県米沢市にて、病院寝具賃貸をメインとするリネンサプライ業を経営していました。資本金一千万円、社員数48名、年商3億の同族スモールカンパニーです。経営者とはいえ、父が創業者の為、私は世襲で社長を継承したといっても過言ではありません。2代目後継者です。
リネンサプライ業界にも、価格破壊の波がおしよせ、近い将来、私の会社の経営を圧迫する状況が危惧されるに至りました。このような状況を打開する施策は何か。連日、その戦略を模索する日々が続き、眠れぬ夜が続きました。
こんな時、一冊の本と遭遇するにいたりました。日本M&Aセンター社長、分林靖博氏の著書、「中小企業M&Aの時代がやってきた」という、まさに、中小企業の生き残り策を教示した内容の本でした。この本の内容にて私の目から鱗がおちました。出口の見えない大不況下、中小企業が生き延びる為の経営指南書であるばかりか、同族企業の相続税の恐ろしさを教示してあり、自己の経営の甘さを問い正される数々の内容でした。
それまでの私は、M&Aという名称と内容は、漠然と知ってはいたものの、それとて、中小企業とは無縁の施策であり、企業の売却、買収等は、大手企業の経営戦略と思っていたことも事実です。しかしながら、大手企業どころか、資本金一千万円、年商3億の弱小スモールカンパニーが、億単位の売却額の企業評価を受け、M&Aを成功させてしまったのです。
それも、M&Aパターンの大半を占める、創業者が後継者難にて売却し、後はハッピーリタイアというケースとは違い、私は当時四十九才の働き盛りであり、M&Aで得た資金を新事業の起業資金にし、新たに新会社株式会社メルサを設立し、新事業を立ち上げてしまったのです。
しかし、今振り返ると、私の決断が一年遅かったならば、満足のいく資金は確保できなかったかもしれません。利潤どころか、決断を誤れば倒産に追い込まれたかも知れないのです。時間は私たち人類と違い、優柔不断ではなく、世の中の様々な変化は、猛スピードで私たちに襲いかかってきます。その社会変化のスピードに気づくことなく、タイミングを誤れば、一瞬先は暗闇です。実質、無借金経営であった当社でさえも様々な壁にぶちあたりました。
その生身の体験を全国の中小企業、特に小規模同族会社の2代目経営者、そして2代目経営者の前途を案じる、創業者の方々に開示するため、その
実践記を出版いたしました。一度御笑読いただければ幸いです。
M&Aと言っても、中小企業の大半の経営者は、その知識について、目を向けていないのが現実であろうと推察します。M&Aは、企業の存続と発展の為の戦略です。出口の見えない大不況の現況に活路を見出す手法でもあり、これからの中小企業にこそ、その戦略ノウハウが求められる時代であるものと確信しているところです。
私自身経営の第一線に携わり約二十年。私は常々、会社を成長させるためには、社長が適当なタイミングを見計らい、退任することであるという持論を持っておりました。二十年も経営の第一線に身を投じていると、時代の変化に気づかず、なんとかなるという驕りと、変化に対応する施策に遅れが生じ、致命傷となってしまうのです。
変化のスピードの早い時代に適応するには、行動力溢れる優秀な若き力と、経営革新を施せる経営者としての資質が必要です。しかし、理屈をわかっていながらも、どれだけの経営者が、会社を成長させる為、現業における自分の器を悟り、自分で自分の首を切り、後進に道を譲ることができるでしょうか。
私が実践したM&Aは社員の働き場を継続し、私達同族は倒産という最悪の状況を回避するばかりでなく起死回生を図り、買収した会社は当地のシェアを確保と、さらなる営業拡大を目論むことが可能となるなど、多くの人々をハッピーにした経営戦略でありました。
3〜5年後の自社の姿を想定し、企業の存続と発展の為にいま何をすべきか。経営者の英断が求められる時代です。
悲観的に物事をとらえ楽観的に物事を進捗させる
楽観的に物事をとらえ悲観的に物事を進捗させる
私の経営革新は、前者を選びましたが、皆さんはどちらを選ぶのでしょうか。